ある日突然コウモリが部屋に入ってくると、どうしていいかわからず困ってしまいますよね。危険はないのか?ペットへの悪影響は?人に害はないの?
生態についてよくわからないと、不安がつのります。しかし、生態や危険性、扱い方を正しく理解すれば恐れることはありません。

そこで今回は、「コウモリの生態と生活への影響」「ひょんなことでコウモリを飼育保護することになった場合の世話の仕方」を紹介します。

ある日突然コウモリが部屋に舞い込んできても、上手に対処することができるようになります。

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1 コウモリについて

コウモリについて

昔々、獣と鳥の間で戦争がありました。

コウモリは獣の前では「私は全身に毛が生えているから、獣の仲間です。」といい、鳥の前では「私は羽があるから、鳥の仲間です。」といいました。

鳥と獣が和解した後、卑怯なコウモリは鳥からも獣からも嫌われ、洞窟に身を潜めて夜だけ飛ぶようになりました。

コウモリは昔から「鳥にも獣にも分類できない奇妙な動物」とされていました。

しかし現在では、生態は次のように解明されました。

  • 鳥ではなく哺乳類
  • 鳥のように卵を産むのではなく、直接子供を産んで乳で育てる、すなわち「哺乳」をする
  • 翼はあるが、羽はない

それではさらに詳しい生態について、次の順に詳しく解説します。

  1. 日本のコウモリの種類
  2. 危険性はあるか?
  3. 繁殖力の強さ
  4. 鳥獣保護法の対象とは?
  5. 冬眠はするのか?

日本のコウモリは37種、自宅に現れるのは「アブラコウモリ」

日本には37種のコウモリがいますが、その中でもみなさんがよくみかけるのは、別名「イエコウモリ」と呼ばれる「アブラコウモリ」という種類でしょう。

アブラコウモリ

体長わずか6センチ程度、体重は6グラムほどしかありません。アブラコウモリの体重を1円玉に換算するとたった『6枚』です。

その小さくて柔らかい体を活かして、わずか1,5センチの隙間があればどこでも侵入してきます。

人家を好み、玄関や軒下にとまっているのを見かけます。小さな隙間や通気口から入り込み、そのまま屋根裏や天井裏、ある場合にはエアコンの中に生息することがあります。

夜中にどこからか、ガサガサ音がするならば、それはネズミではなく、コウモリかもしれません。

襲ってはこないがフンやコウモリ自体に付着した「菌」が危険

アブラコウモリ自体は小さくておとなしいので、積極的に襲ってくるという危険性はありません。

ただ、野生動物なので100%安全とはいえません。

その理由が『フン害』『病原菌』です。

フン害によるアレルギー発症

コウモリのフンは乾燥して空気中を舞い漂う特性があります。

その糞フンは雑菌や寄生虫がたくさんついているので、人が吸い込んでしまう可能性があります。

知らないうちにコウモリのフンを「吸って」しまうと、感染症やアレルギー症状を引き起こすことがあり、ひどい場合はアナフィラキシーショックを引き起こします。

体の小ささとは裏腹に、1日に4個以上もフンをするので、リスクは高いといえます。

万が一部屋の中に入ってきた野生のコウモリを放置していると、自由に部屋の中を飛び回り、ふんをまき散らされてしまいます。

病原菌に人が感染する

野生動物すべてにいえることですが、コウモリの体表には菌や寄生虫がついています。

つまり、コウモリは人にとって危険なウイルスを媒介してあなたのもとへ持ち込んでしまうということです。

特にコウモリに寄生することで名付けられた、「コウモリマルヒメダニ」というダニの一種には要注意で、過去には富山県で、コウモリを通して人に寄生する事例がありました。

富山県衛生研究所によりますと、コウモリマルヒメダニに寄生した3例のうち2例の患者は「コウモリに寄生したものが偶然人を吸血しに来たと考えられる」と報告しています。

また患者は「カユミ」やコウモリマルヒメダニが体に付着していることにより、「異物感」がしたと述べています。

参考URL:CiNii「コウモリマルヒメダニの人体寄3例について」より抜粋 

この事例からもわかるように、万が一遭遇しても、どんな菌や寄生虫がいるかわかりませんので、できるだけ触らないようにすることが大切です。

もしも触れてしまったのなら、すぐに手を洗い消毒するようにしてください。

攻撃性はないが自己防衛で噛みつくこともある

コウモリ自体に攻撃性はありませんが、捕まえようとすると、「正当防衛」として噛みついてくることがあります。

捕まえて追い出すときは噛まれても大丈夫なように、軍手やゴム手袋をつけてください。

手袋さえつけていれば、牙はありますがとても小さいため、牙が軍手やゴム手袋を突き破ってしまうことはまずありません。

驚異的な繁殖力で100匹以上の群れも確認されるほど

そんな危険を持つコウモリですが、放置するとあっという間に繁殖してしまう驚異的な繁殖能力があります。

世界でも「一度に複数の子供を産むコウモリは珍しい」といわれていて、日本に生息するコウモリは世界規模比較しても「繁殖力が高いコウモリ」なんです。

7月初旬に、最大4匹の子供を産むコウモリは、わずか3ヶ月後の10月に交尾をし、そして翌年4月の下旬に、再び次の子供を出産します。

その驚異的な繁殖力を物語るように、「コウモリが100匹以上の群れになっている」という目撃ケースもあります。

危険なフンもコウモリ自体の数も放置すれば瞬く間に増えていき、人に害がもたらされるのは必然になってきます。

鳥獣保護法の対象なので傷つけるのも捕獲もNG

しかしそんな危険なコウモリは「鳥獣保護法」という法律で守られた『保護対象動物』です。

どんなにフンをされたり、住み着かれたり部屋に侵入されても、コウモリを危険に晒すようなやり方で追い払ったり、捕獲したり、駆除することは『法律で禁止』されているんです。

鳥獣保護法とはコウモリを含む鳥獣を故意に保護・殺傷をしてはならない、という法律です。

鳥獣保護法第一条
「鳥獣の保護及び狩猟の適正化を図り、もって生物の多様性の確保、生活環境の保全及び農林水産業の健全な発展に寄与することを通じて、自然環境の恵沢を享受できる国民生活の確保及び地域社会の健全な発展に資することを目的とする」
参考URL: 「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」第一条より http://law.e-gov.go.jp/htmldata/H14/H14HO088.html

動物好きの方には、「コウモリってよくよくみるとかわいい」「弱った赤ちゃんがいるから回復するまで保護してあげて、それから逃がしてやりたい」と思うのが人がいらっしゃいます。

しかしこれも法律に抵触します。勝手に飼育するのもダメなんです。

11月中旬~3月下旬までは冬眠する

日本のコウモリは「11月中旬~3月中下旬」まで冬眠します。

しかし都内では最近になって、冬場でもコウモリを見かけるようになったという報告もあがっています。

コウモリと冬眠に関しての研究報告を、田代 瑞樹氏は横浜国立大学教育デザインコース 理科領域の学術論文の中で、次のように書かれています。

「冬眠開始時期は気温と密接に関連していた。活動開始時刻の気温が20度を下回ると活動が抑制される個体が増え、15度を下回ると冬眠に入り始め、9.7度を下回ると全ての個体が冬眠に入った。

 
引用元:横浜国立大学学術情報リポジトリ「アブラコウモリの生態に関する研究を基にした教材開発及び授業実践」より 

温暖化や暖房器具の普及で、冬眠しないコウモリが現れ始めたということですね。

その繁殖力を考えると、「誰もが自分の生活に大きく関係してくる動物である」ことがわかります。

では、そんなコウモリが家に侵入してきてしまった場合どうしたらよいのでしょうか?泣き寝入りしてフンだらけにされる?
いえいえ、次の方法で追い出してください。

2 部屋に入ってきたら素早く追い出すのがベスト

部屋に入り込んでしまったら、出来るだけ素早く、スムーズに部屋から追い出す必要があります。

長期間部屋にいると次の危険があるからです。

  • 大量のフンをされる
  • 住人がアレルギーや感染症の危険に晒される
  • コウモリ自体が弱って死ぬ可能性がある
  • 室内で弱らせて死んだとなる法律に引っかかる可能性がある

追い出す方法には、次の2つに1つです。

  • 便利屋やコウモリ駆除業者など、専門業者に依頼して即日追い出ししてもらう
  • 便利屋やコウモリ駆除業者など、専門業者に依頼して届け出と捕獲を代行してもらう
  • 自力で追い出す

業者に頼むとそれなりにお金がかかります。

「追い出すだけなら自分で…」と思われたら、次の注意点に気を付けながら2ステップで追い出してください。

・注意点
・便利グッズ
・追い出し法ステップ1「嫌がるもので追い出す」
・追い出し法ステップ2「直接屋外へ誘導する」

注意点

コウモリを追い出すときに気をつけたい基本的に抑えておきたいことは、次の2点です。

  1. コウモリを直接手に触れない
  2. コウモリを傷つけないで追い出す

便利グッズ

オススメの商品はどれも煙や臭いで追い出すタイプのものです。

 

 

素早く追い出す2つのステップ

ステップ1:嫌がるもので追い出す

対策グッズで、コウモリが入り込んでしまった場所を「コウモリにとって嫌な空間」にして、出ていってもらいましょう。

対策グッズでの追い出し4ステップ
  1. コウモリが逃げられるように、窓を全開にする
  2. コウモリが嫌がる対策グッズを使う
  3. 臭いが充満すると、コウモリは出ていく
  4. 追い出したあと、自分が元いた場所に戻ってくる、という習性があるのですぐに部屋の窓を完全に閉める

コウモリは、1センチ程度でも隙間が空いていれば侵入してきますので、隙間なく完全に閉め切りましょう。

ステップ2:直接屋外へ誘導する

対策グッズが効かない場合は、原始的な方法ですが、棒や虫取り網で誘導して追い出しましょう。

直接屋外へ追い出す4ステップ
  1. 万が一噛みつかれても大丈夫なように軍手やゴム手袋をする
  2. マスクもしてフンに備える
  3. 壁にコウモリがとまったら棒で軽く突っついて、窓の外へ逃げていくように誘導する
  4. 追い出したあと、自分が元いた場所に戻ってくる、という習性があるのですぐに部屋の窓を完全に閉める
傷つけないよう注意

アブラコウモリは、意外とどんくさいので棒で追い払うとするとすぐに命中します。

小さいので、勢いよく棒にぶつかると死んでしまうかもしれません。

飛び回っているコウモリを棒でたたき落とそうとするのはやめましょう。

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3 許可を得ての保護と一時飼育法

やむをえない理由で、保護しなければならなくなってしまった場合、しかるべき場所に『届出』をしなければなりません。

では『届出』とはなんでしょうか

届出とは?

届出は書類のようなものは必要なく、電話一本でできます。下記のサイトは、全国にある行政の野生鳥獣保護窓口の連絡先が記載されています。お住いの都道府県に連絡してください。

怪我をしたコウモリの保護に関して、鳥獣保護法の中では次のように定められています。

2) 傷病鳥獣の保護
• ア 許可対象者
国又は地方公共団体の鳥獣行政事務担当職員(出先の機関の職員を含む。)、鳥獣保護員その他特に必要と認められる者。

 
引用元:鳥獣保護管理法 第9『その他鳥獣保護事業の実施のため必要な事項』より 

コウモリが傷ついていて、回復するまでの保護であるなら、届出をすれば「必要と認められた者」とみなされます。

たとえ善意の気持ちで保護しても、無許可の飼育は『鳥獣保護法違反』になってしまいますので注意してくださいね。

保護している間の一時的な世話の仕方

  1. コウモリの餌(主食)である虫と水を用意
  2. 虫は釣具屋さんに売っている「ミルワーム」を購入
  3. 保護したコウモリがまだ赤ちゃんで、ルワームを食べられない場合は、次の方法を試す
    ・ミルワームを細かく刻む
    ・ミルワームの尻尾を切って中身を絞り出してから与える
  4. 水は、ひっくり返らないような容器に入れておく
  5. コウモリの赤ちゃんがどうしても水を飲まないようなら、次の方法を試す
    ・ガーゼに含ませて吸わせる
    ・スポイトから吸わせる

4 保護期間中のペットへの悪影響は隔離すればほぼゼロ

コウモリを保護しようとしたとしても、飼っているペットに悪影響がないか心配になりますが、幸運なことにペット自体への危険性はほとんどありません。

野生のコウモリの影響で1番心配なのは、「ペットに感染症がうつるのではないか」というものですよね。

コウモリの感染症に関して、日本獣医学科医広報担当理事の丸山総一郎氏は、次のように述べています。

「コウモリが関係する(狂犬病,SARS,ニパウイルス感染症,ヘンドラウイルス感染症などの)感染症……は現在のところ日本に存在しませんので、心配することはありません。」

引用元:日本獣医学会「野生動物・動物保護・仕事について」より 

これはコウモリのふんを人が触ってしまったことについての答えですが、コウモリのふんに感染症がない以上、ペットがコウモリに触れた場合も、深刻な感染症を引き起こす心配はない、と判断できます。

※ただしアレルギー体質のワンちゃんネコちゃんは人間と同じようにアレルギーを引き起こす可能性があるので要注意です。

しかしペットは大丈夫でも、コウモリのふんをなめた口で人間をなめると、飼い主さんはアレルギーや病気を引き起こしかねません。

ペットがコウモリのふんを食べてしまったら、ペットの口をウエットティッシュなどできれいに拭いてあげ、もしも、口を拭くだけだと心配だと思われたら、口の周りをシャンプーしてキレイにしてあげてください。

病気の心配は消えました。ただ、一番気を付けていただきたいのが、コウモリの自己防衛によりペットが噛まれることや、です。

注意!狩猟行動を刺激されてペットがコウモリを攻撃してしまう

犬や猫は、『狩り』をする動物です。

『存在しているだけ』で、コウモリは犬や猫の狩猟本能を刺激し、本能的に狩ろうとします。

コウモリの反撃で、犬や猫が傷つくこともあるでしょうし、逆に犬や猫にコウモリがやられてしまう可能性もあります。

犬や猫の狩猟本能をすぐに抑えるのは不可能ですから、保護中は犬や猫がコウモリと接触しないように、コウモリを隔離してあげてください。

5 いなくなったらすぐに消毒清掃で安全確保!

コウモリが接触した場所を消毒する
保護期間の終了、もしくは追い出しが成功したら、コウモリやコウモリのふんが接触した場所は、全てくまなく消毒をしておく必要があります。

では、「どんな掃除・消毒をどの程度」したらよいのでしょうか?

掃除・消毒の方法

コウモリを捕獲したり、追い出したりした後は次の流れで徹底的に掃除・消毒してください。

掃除の手順
  1. 乾燥したコウモリのふんを吸ってしまわないように、手袋とマスクを着用しましょう。
  2. コウモリがとまっていた場所の下には、ふんが落ちているはずです。まずはそれをほうきで取り除いでください。
  3. ホウキで掃いたらそのホウキは処分します。
  4. 続いて使い捨てれるクイックルワイパーで細かい溝もしっかり拭います。
  5. 使い終わったものは全て袋に入れて縛って捨てましょう。
消毒の手順
  1. 掃除の後、接触箇所は、間接的に触れたものも含めすべてアルコールスプレーをかけます。
  2. ペット用の除菌消毒アルコールスプレーなら安全な上に消臭までできます。
  3. 最後にぞうきんでキレイに乾拭きして、すべてゴミに出して終了です。
  4. 終わったあとはしっかり換気しましょう。
掃除機はNG!

コウモリのふんを、掃除機で吸い取るのは絶対にやめてください。掃除機のヘッド部分に菌が付きますし、吹き出し口から乾燥した粉末のふんが出てしまうことがあります。

まとめ

得体の知らない動物と思うと気味が悪いですが、コウモリの生態を知ると親しみがわいてきませんか?
実際コウモリをまじまじと見ていると「かわいい」とさえ思えてくるかもしれません。

しかし、たとえコウモリを保護してあげることになったとしても、保護の目的は『野生に帰してあげること』です。

保護してくれて、野生に帰してあげたコウモリは、きっと感謝の気持ちからあなたを害する害虫をたくさん食べてくれることでしょう。