ある日友人が「愛犬がコウモリの糞を食べたかもしれない…」と慌てて電話をかけてきました。

友人:うちの愛犬がベランダでコウモリの糞を食べたかもしれない…。

私:え?コウモリの糞って何でわかったの?

友人:最近テレビで「ベランダに落ちている黒い糞の形状をしたのはコウモリかもしれない」と言ってて、その時に見た形状と全く一緒だったんだよね。

私:そっか、、、そういえば愛犬ってまだ生きてたの?長生きしてるねえ!

友人:そうそう、もう11年目だから身体も弱ってきてるし、何かと心配で…。

しかも、コウモリの糞って何か色々ヤバそうだし、どうしたらいいかなぁ?
私:そうだね、実はコウモリの糞って思ったよりヤバくないんだよ…。

コウモリは『野良猫』と同じような感覚だから。

友人:え?コウモリが野良猫と一緒?…
私:そうだよ、実はね…

もしかしてあなたも私の友人のように、ペットが誤って糞を飲み込んでしまった時、変な病気にかからないか心配になったと感じたことはありませんか?
「コウモリの糞」なんていつもマジマジ見ることはないでしょうし、そもそもコウモリの糞が身体にどんな影響を及ぼすのか、どんな病気になってしまうのかを、日々考えている人はあまり多くないと思います。

そこで今回の記事では、そもそもコウモリの糞が身体にどんな影響を及ぼしてしまうのか、人間にとって、そしてペットにとって有害なのか?病気はないのか?など『コウモリの糞』について詳しく紹介します。

『コウモリの糞』について理解できるようになれば、自分自身でコウモリのふん対策ができるようになりますし、友人のようにペットが誤飲してしまったとしてもすぐに対処できるようになります。

私の友人は、今まで人任せにしていた糞の掃除を自分でするようになりましたし、愛犬に何かあってもすぐに対処できるようになりました。あなたもこの記事を読んでぜひ実践してみてください。

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1 日本でよく見るコウモリの種類

日本でよく見るコウモリの種類
日本のお宅で見かけるコウモリは「アブラコウモリ」という種類です。体長5cm、体重10kg程度のその小さなコウモリは全くの人畜無害です。

人間を襲ってくることはありません。むしろ害虫を駆除してくれる益獣(えきじゅう)です。
「コウモリ=吸血鬼!」のようなイメージを持ってらっしゃる方もいるかもしれませんが、吸血コウモリは日本には生息していません。※吸血コウモリは南米を中心にのみ生息しています。

2 怖い?怖くない?コウモリが持っている病気

ではアブラコウモリだから本当に人畜無害なのか?というと実はそうではありません。

『100%安全な野生動物』は存在しないんですね。いくら人畜無害の動物だったとしても、野生動物には必ず菌や病気を持っているものです。

『コウモリだから例外』ではないんです。

2-1 コウモリ自体が持っている菌・病気

コウモリが持っている可能性がある菌・病気として『狂犬病』『細菌、寄生虫』の2種類があります。

1.狂犬病

狂犬病ウィルスは確かに犬やコウモリを好んで宿主としますが、哺乳類なら全て持っている可能性があります。ですからコウモリだけではなく、犬や猫も感染している場合があります。

狂犬病はほとんどの国で感染する危険性がありますが、嬉しいことに日本では狂犬病はほぼ撲滅されました。

狂犬病予防法が制定される1950年以前、日本国内では多くの犬が狂犬病と診断され、ヒトも狂犬病に感染し死亡していました。

このような状況のなか狂犬病予防法が施行され、犬の登録、予防注射、野犬等の抑留が徹底されるようになり、わずか7年という短期間のうちに狂犬病を撲滅するに至りました。

1953年 1954年 1955年 1956年 1970年 2006年
死亡者数 3人 1人 0人 1人 1人 (※1) 2人 (※2)
犬の発生数 176頭 98頭 23頭 6頭 発生なし 発生なし

※1 ネパールを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例。

※2 フィリピンを旅行中、犬に咬まれ帰国後発病、死亡した輸入症例。

引用元:厚生労働省「狂犬病 我が国における発生状況」より
http://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou10/

厚生労働省の報告を見ると、狂犬病に感染したという報告は50年以上されていません。なので、飼っている犬や猫から狂犬病を移される心配をしないのと同じように、コウモリから狂犬病を移されることも心配する必要はないんですね。

2.細菌、寄生虫

コウモリに伝染病となる病気はありませんが野生動物の1種として注意をしなければならないことがあります。

それは『様々な種類の細菌、寄生虫がついている』ということです。とくに、コウモリに寄生する「コウモリマルヒメダニ」というダニの一種が付いていることもあります。

実はこのダニ、人間にも寄生します。「コウモリマルヒメダニ」は人に寄生すると、機会あれば人から吸血し、「カユミ」や「アレルギー症状」を発症させることがあります。細菌や寄生虫などの人への寄生の危険性から、コウモリに不用意に接触するのは避けておく方が賢明でしょう。

2-2 糞が持っている菌・病気

世界ではコウモリの糞による感染症(例:ヒストプラスマ症)があると聞いたことがありますが、日本のコウモリ(アブラコウモリ)の糞に伝染病を媒介するような病原菌があると聞いたことはありません。

ただし、当然『糞』ですので雑菌や寄生虫がたくさんついています。コウモリは1日に4個以上の糞をするため糞が一か所にたまりやすいという特徴があります。そのたまった糞によってカビ菌が繁殖したり、乾燥した糞が空気中に舞うことによってアレルギー症状の原因になったりするという二次被害も予想されます。

そこで、コウモリの糞はこまめに掃除して取り除いておくのは大切なことです。コウモリの糞を掃除する場合、乾燥した粉の糞を吸い込んでしまうのを避けるためにマスクと手袋を着用してください。

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3 コウモリの糞より怖い「ネズミの糞」

コウモリの糞より怖い「ネズミの糞」
菌の繁殖、アレルギーの原因以外で最も危険なのが、実は「ネズミの糞と間違えて取り扱ってしまうこと」です。菌の繁殖力、アレルギー、病気の危険性の点では、コウモリの糞よりも、ネズミの糞の方が、何倍もの危険性があるのです。

代表的な例を出すと、ネズミの糞には「ハンタイウイルス、レプトスピラ菌、ペスト菌、鼠咬症スピリルム」など、人体にとってとても危険な菌が潜んでいるんです。なので、コウモリの糞は安全♪と思って油断していると、実はネズミの糞だったということも考えられるので注意しましょう。

コウモリの糞の見分け方

コウモリの糞に気をつけることよりも重要なのは、『ネズミの糞と間違わないこと』です。コウモリとネズミの糞は似ているので見分けがつきにくいですが、コウモリの糞は場所、特徴がプロでなくてもある程度見極めることができます。

見分け方1:糞の落ちている場所

まずその糞が落ちている場所を確認して下さい。ネズミは軒先や屋根の下に大量の糞をする可能性は低いので、軒先や屋根の下に大量に糞が落ちている場合『コウモリの糞である可能性が高い』と言えるでしょう。

見分け方2:糞の特徴

コウモリは昆虫しか食べないため糞はもろく崩れやすい』という性質があります。一方ネズミは雑食なので糞に水分が含まれていて『崩れにくい』という性質があります。

糞を見かけたら棒などでつついて確認してみましょう。※感染症予防のためコウモリの糞を直接手で触れないようにしましょうね!

4 ペットや人体に及ぼす4つの影響

2016年8月24日掲載の日本獣医学会広報担当理事丸山総一氏は「コウモリの糞に触ってしまったが大丈夫でしょうか?」という質問に対して次のように回答しています。

コウモリが関係する(狂犬病,SARS,ニパウイルス感染症,ヘンドラウイルス感染症などの)感染症……は現在のところ日本に存在しませんので、心配することはありません。

 
引用元:https://goo.gl/9Y3nZW

上記内容は、「対人」についての見解ですので、ペットについては詳しく書かれていませんが、少なくとも「日本のコウモリには感染症が存在しない」ということがわかります。

ではコウモリがペットや人体に及ぼす影響が全くのゼロなのか?と思われるかもしれませんが、実はそうではありません。「悪臭の原因」「アレルギーの原因」「野生動物の危険性」という点では、充分に気をつけなければいけないんです。

(1)悪臭の元

コウモリの糞は一か所に大量にたまりますので悪臭の元となります。ドブのような酸っぱい臭いがします。

コウモリは「すぐに目につく場所」「生活環境に近いが狭くて見えづらい場所」に糞をすることが多々あるので、普段の生活環境でどこからか糞の臭いがただよってくることがあります。

あのドブのような酸っぱい臭いの中で生活するには、多少の覚悟が必要になります。

(2)アレルギーの原因

乾燥したコウモリの糞にはカビ菌が溜まっています。そのカビ菌が風を漂い私たちの体内に入り込み、ハウスダストのようなアレルギー症状を引き起こします。

(3)感染症

これは野生動物すべてに言えることですが、コウモリやコウモリの糞には様々な菌がありますので触れると感染症の病気にかかることがあります。

何らかの原因でコウモリやコウモリの糞に触れてしまったらすぐに手を洗って下さい。着ている服に触れたなら脱いで洗うようにしておきましょう。

(4)誤飲

飼っている犬や猫が誤ってコウモリの糞を食べてしまったらどうしたらよいのでしょうか?獣医さんに直接確認してみましたが、「基本的に動物が動物の糞を食べても心配する必要はないよ。例え飼っている犬が高齢でも大丈夫。」とおっしゃっていました。

ただし、コウモリの糞を食べた口には菌がいっぱいついています。コウモリの糞を食べた口で、人間をなめたり人間が口にするものに触れたりすることがあります。犬や猫がコウモリの糞を食べてしまったら、口をきれいに拭いてあげてください。

5 自分で出来るコウモリのふん対策

コウモリは一度住み着いてしまったらずっとその住み家に住み続け、糞を出し続けます。糞を見たら全て業者任せにしていると、お金がいくらあっても足りません。

なので、もし仮に自宅にコウモリの糞と思わしき物体があれば、「まずは業者!」ではなく、ご自身で「ふん対策」をすることをオススメします。

自分でできるようなれば、コウモリが今家に住んでいるかがわかるようになりますし、余計な出費を抑えることもできます。以下で紹介する3つのステップで「ふん対策」を行えば、素人でもコウモリを家から追い出し、二度と住み着かせないようにすることができるようになります。

ステップ1:侵入経路を防ぐ

まずはコウモリの侵入経路となる箇所を防ぎます。コウモリの糞がたまっている場所がみつかったならその近くにコウモリが住んでいる可能性があります。

コウモリはわずかな隙間があれば侵入してきます。クーラーの室外機のパイプやクーラーの中にまで入り、巣としていることがあるためなんですね。

ステップ2:穴や隙間をふさぐ

侵入経路をふさいでも、コウモリは別の出入り口を探し始めます。なので、侵入経路だけをふせぐのではなく、全ての穴や隙間をふさぐ必要があるのです。

コウモリは夕暮れから夜間の間に外に出ていきます。外に出ているすきに、巣となっている出入り口になりそうな穴や隙間をふせぐようにしましょう。コウモリは帰ってきても入ることができないので。別の住み家を見つけるため家から離れていくでしょう。

ステップ3:忌避剤を使う

いよいよ最後のステップです。忌避剤(きひざい)を行ってください。侵入経路や、穴や隙間を全てふさいだとしても、コウモリが今まで住んでいた巣をみすみす手放すことはありません。

なので、「コウモリを寄せ付けないようにすること」が重要なんです。忌避剤としてよく使われているのは、「害虫駆除スプレー」や「光を反射するモノを置く」などです。

害虫駆除スプレー

害虫駆除スプレーは「ハッカ」が含まれているモノを選ぶようにしましょう。コウモリはハッカの臭いを嫌がる動物なので、ふさいだ侵入経路や穴、隙間にハッカが含まれるスプレー噴射しておけば、ハッカの臭いを嫌がるコウモリは近寄りにくくなります。

光を反射するモノを置く

光を反射するモノを置くのもコウモリを近寄らせないために有効な手段です。光を反射するもの(CD、DVD、アルミホイールなど)は、コウモリが飛行するために必要な音波を邪魔する効果があるので、張り付けておくとコウモリはその場所を嫌がって離れていきます。

まとめ

コウモリの見かけは気持ちが悪く、嫌なイメージがある方も多いと思います。特に女性の皆さんのほとんどはコウモリが苦手かもしれません。

しかしこの記事で扱ったようにコウモリの糞は害がありますが、コウモリ自体の害は全くありません。むしろ害虫を食べてくれる頼もしい存在です。野良猫より役に立つ動物かもしれないんです。

「コウモリが自由に糞をできる場所に帰してあげる。」そんな気持ちでコウモリのふん対策をしてあげましょう。