ある日、奈良の友人から「蜂にさされた」とこんなメールが届きました。

TO 筆者(害虫/害獣)駆除専門ライター

今日、蜂に刺されてん。
あわててその場から逃げて、刺された箇所の周りを歯で噛んで、毒が回らないようにしたんやんか…
すると小さい「水ぶくれ」ができたからつぶしたら、そこから液体が出たから「これ毒やん!」と思って何度かつぶしてん。

そして傷口にステロイド軟膏を塗って、しばらく様子を見たんやけど、蜂に刺された場所を気付かへんうちにかいてしまって、被れてしまってん。

俺は「蜂くらいで病院には行きたくない」と思ってたんやけど、「今まで蜂に4回刺されたことがある」、というと、同僚が「蜂アレルギーになると危ない」、と病院を強くすすめるので結局行くことにしてん。

医者に何の蜂か聞かれて、迷いなく「アシナガバチです。」と答えたんやけど、家に帰ってネットでよくよく調べてみると、自分が刺されたのはスズメバチやったんだよね。

病院でほどこされた処置は消毒して軟膏を塗り、弱い抗アレルギー剤を一錠のんだだけ。

しばらくすると、ハチに刺されたかゆみがぶり返して治まらなくなったので、かゆみ止めの薬を、薬局で薬剤師さんに相談して買ってん。

塗った直後はかゆみが治まるんやけど、数分後またかゆくなる。この繰り返し…
氷で冷やすのがいい、と言われたんやけどやっぱり数分後にまたかゆくなるし、、、
とりあえずかゆみはいったん収まったんやけど、今日急に膝の一部が大きく腫れてかゆくてたまらんねん。

たぶん今日、仕事中にありに噛まれたからだと思う。
普段は蟻ぐらい何ともないのに、なんでこんなかゆいんやろう?
どうしたらいいか教えて欲しいので、至急返信よろしく。

蜂に刺された哀れな友人より

「今までにはない症状」が急に体に現れると、私たちは不安になるものです。

特に蜂は、刺されたことによって命を失う人もいますので怖いですよね。

※厚生労働省の調査によると蜂に刺されたことによって、毎年10名~25名ほどの死者が出ています。

林野庁「蜂刺され災害を防ごう」より

友人のメールの行間には、次のような悩みがこめられていました。

  • ハチにさされたことで、虫刺されに何か悪い影響があるのか。
  • 蜂の種類によって医療処置の違いはあるのか。
  • 蜂に刺された痛みやかゆみが引かないのはなぜなのか。
  • 自分でできることがあるなら、どうやったら蜂に刺された症状を治せるのか。

そこで今回の記事は、蜂に刺されて不安に感じている人に向けて、「蜂に刺された時の適切な対処法」をご紹介します。

蜂に刺された時に、「やるべきでないこと」と「やるべきこと」があります。
また、「自分で出来る処置」と「病院で受けられる処置」にもはっきりとした違いがあります。

私の友人は、蜂に刺されたことによる痛みやかゆみの『理由』を理解したことにより、不安はなくなりました。

やがて、蜂に刺された症状はなくなったようですし、「次、蜂に刺されてももう怖くないで~。ありがとう~」と感謝のメールをくれました。

蜂に刺されて「最悪な事態」にならないのと同時に、「不必要に心配する」ことがないよう、あなたもこの記事を最後まで読んで、蜂に刺されてしまった時の備えをしておきましょう。

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1 蜂について理解しよう

一口に「蜂に刺された」といっても、蜂の種類によって症状や危険度が違います。

そもそも、ほとんど無害な蜂もいます。

蜂の種類の知識がないと、油断して最悪な事態になったり、あるいは無駄な恐怖を味わうことになったりしてしまうかもしれません。

刺されると毒性がある蜂は「細腰亜目(さいようあもく、ほそこしあもく)」という種類で、腰が細くくびれているのが特徴です。

ここでは細腰亜目の中でも、日本で最も被害が多いと言われている「ミツバチ」「アシナガバチ」「スズメバチ」また「刺されても大丈夫な蜂」についての理解を深めていきましょう。

1-1 ミツバチ

ミツバチ
ミツバチに刺されると、チクッとした痛みがあり、刺された跡が赤くなります。

たいていの場合、痛みは24時間以内にひき、その後、しこりができてその部分がかゆくなります。

ミツバチは通常単独行動をしていて、比較的おとなしいため、刺激しなければほとんど襲ってくることがありません。

しかし、一度ミツバチにさされると抜けた毒針から警報フェロモンを出し、周囲にいる仲間を呼び寄せます。

ミツバチに刺されたら、警報フェロモンで寄ってくる蜂から逃れるために、まずその場所から「20メートル以上」離れてください。

1-2 スズメバチ

スズメバチ
スズメバチは非常に狂暴で、刺激していなくても巣が近くにあると襲ってきます。

また、『1匹で何度でも刺せる』ため、たとえ1匹でも油断できません。
スズメバチに刺されると、激しい痛みとともにかゆみがあり、患部が赤くなって腫れあがります。

毒性はかなり強いので、スズメバチに刺されたら病院に行くことをおすすめします。

スズメバチはまた、刺されなくても毒霧を噴射することがありますので注意が必要です。

目に入ると失明したり、吸い込むと呼吸困難になったりすることがあり、大変危険です。

1-3 アシナガバチ

アシナガバチ
「最も毒が強力なのはスズメバチ」と思っている人も多いと思いますが、実際にはスズメバチよりも大きいアシナガバチのほうが『毒も痛みも強力』です。

アシナガバチに刺された時の痛みは非常に強く、毒性も強力なので患部がはれてパンパンになります。

アシナガバチに刺されたら、出来るだけ早く病院に行くようにしてください。

しかし、攻撃性はスズメバチより低く、巣に近づいたり、刺激したりしない限り襲ってくることはありません。

1-4 刺されても大丈夫な蜂

蜂の中には、刺されても毒性が低いので痛みがすぐに引いてしまう種類がいます。

刺されても大丈夫の蜂の種類は、ハバチ、キバチ、キクバチなどがいて広腰亜目(こうようあもく、ひろこしあもく)と呼ばれます。

毒性のない広腰亜目の蜂は、名前の通り『胸部と腹部の細さにくびれがなく、かわりがない』ので、すぐに見分けることができます。

広腰亜目の蜂はそもそも攻撃性がほとんどなく、めったに人を刺すことはありません。

しかしまれに、攻撃されたと思って刺すことがあるかもしれませんが、広腰亜目の蜂は攻撃のためではなく、産卵のために用いるものなので人の皮膚を通すほど丈夫ではなく、チクッと痛む程度です。

毒性はないので、病院に行く必要はもちろん、特に治療する必要はありません。

※無害な蜂については「もう蜂の巣は作らせない!環境に優しい蜂の巣作り防御法 駆除の必要がない蜂」で詳しく紹介していますので、合わせてお読みください。

2 蜂に刺されたときにやってはいけないこと

蜂に刺されたときに、「こうするとよい」と言われている『世の中の常識』の中には、さらなる危険を招く行為があります。

また、あなたが反射的にしてしまう行動の中にも危険が潜んでいる可能性があります。

蜂に刺されたときにやってしまいがちな、あるいはやると良いと言われている「大声を出すこと」「蜂の前で急に走って逃げる」「すぐに毒針を抜くこと」「口で毒を吸い出すこと」「アンモニアをつけること」「水ぶくれをつぶすこと」の危険性を詳しく書きます。

2-1 大声を出す

蜂に刺されたときに、「大声を出す」のは大変危険な行為です。
目の前に突然『蜂の大群』が現れたり、刺されたりするとビックリして大声を出してしまうかもしれません。

しかし、大声を出すと「結果としてより蜂を刺激すること」になり、蜂を攻撃的にさせ、さらに新たな蜂を呼び寄せる可能性が「より高く」なってしまいます。

2-2 蜂の前で急に走って逃げる

同様の理由で「蜂の前で急に走って逃げる」のも、蜂を刺激する危険な行為です。

蜂に刺されたときに、『できるだけ冷静でいる』ということは大切なことです。

蜂にあったり、刺されたりしてもできるだけ声を出さないでゆっくりと後ずさりをしてその場を離れるようにしましょう。

2-3 すぐに毒針を抜く

蜂に刺されたときに、毒針を抜くより先に『その場を離れること』を優先してください。

蜂に刺された時に毒針を抜かないと毒が回ってしまうのではないか、と思うかもしれませんが、それよりも危険なのは『他の蜂の襲来』です。

ミツバチの針には警報フェロモンがありますし、スズメバチの出す毒霧も他の蜂を呼び寄せるフェロモンを出します。

短期間のうちに蜂に2度以上刺されると、命さえ失いかねない非常に危険な状況になってしまいます。

蜂に刺されたら、まずその場を20メートル以上離れてください。

そして、安全な場所で毒針を抜いてください。
毒針は、2分以内に抜けば、毒の影響を『かなり減らすことができる』ので安心です。

しかし、蜂に刺されると慌ててしまうので、「2分」はすぐに過ぎてしまうかもしれません。
でも、たとえ「2分」が過ぎてしまったとしても諦めないで下さい。

「15分」以内に蜂を取り除けば、毒が体内に入り込むのを『ある程度は』防ぐことができます。

2-4 口で毒を吸い出す

蜂に刺された場所を口で毒を吸い出そうとすると、毒が入り込んでしまうため決してしないでください。

すぐに「ぺっ!と吐き出せば大丈夫!」という人がいますが、虫歯や歯茎などから蜂の毒が侵入してしまう危険性があります。

蜂に刺されたら、水で毒を洗い流すようにしましょう。

2-5 アンモニアをつける

蜂に刺された部分に、アンモニア、つまり尿をかけるのは全く効果がないどころか、皮膚炎を引き起こしてしまうかもしれませんので絶対にやめてください。

「蜂に刺されたら尿をかけるとよい」というのはよく知られていますが、それは蜂の毒素が酸の一種なので、尿のアンモニアが蜂の毒素を中和すると考えられていたからです。

しかし尿がアンモニアに変化するのは、尿を出してから長時間たってからのこと。

「尿=アンモニア」ではないんですね。

しかも、「蜂の毒素は酸ではなくタンパク質である」、ということがわかったので、仮に尿がアンモニアに変化しても、中和することはありません。

このように「蜂の毒素はアンモニアで中和しない」「尿=アンモニアではない」という二重の意味で、蜂に刺された傷口に尿をかけても『全く』意味がありません。

意味がないどころか、傷口に尿をかけることによって菌が入り皮膚炎を引き起こすかもしれません。

傷口にはアンモニア(尿)ではなく、「抗ヒスタミン成分」か、「ステロイド成分」含まれている虫刺され用の薬を塗ってください。

2-6 水ぶくれをつぶす

蜂に刺された場所が水ぶくれになっても、つぶしてはいけません。

水ぶくれをつぶしてその膿が別の場所につくと「とびひ」して、その箇所にもかゆみや湿疹がでます。

※「とびひ」とは細菌が他の皮膚に飛び移って感染すること。

なので、水ぶくれになった部分が気になってもそっとしておいてください。

水ぶくれの部分がかゆいなら、良く冷やすか、抗ヒスタミン成分が含まれている虫刺され用の薬を塗ってください。

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3 蜂に刺されたときの症状

蜂に刺された時の症状は、数分で消える症状から命の危険性がある重い症状まで様々です。

どの症状も100%安全ということはありませんので、「病院に行く必要はない」とは言えませんが、冷静に行動するためにも蜂に刺された自分や他の人が「どんな症状で、どれほど危険なレベルか」を把握しておくことは大切です。

3-1 アナフィラキシーショック

蜂に刺されてから30分以内に起こるアナフィラキシーショックは、最も注意が必要な症状です。

アナフィラキシーショックとは、短期間に全身症状が表れることで、呼吸困難、意識障害、最悪の場合死に至ることもあり大変危険です。

あなたも、「蜂に2回以上刺されると危険」ということを聞いたことはありませんか?

アナフィラキシーショックになるメカニズム

アナフィラキシーショックは「ハチ毒アレルギー」と強い関係があります。

蜂に一度刺されると、「ハチ毒アレルギー」を持ってしまうことがあります。

ハチ毒アレルギーを持っている人がもう一度蜂に刺されると、約10%の確率でアナフィラキシー症状になるといわれています。

そして、アナフィラキシー症状になった人のうちの数%は、さらに重度の症状であるアナフィラキシーショックに陥ります。

またアナフィラキシーショックになる人の多くは、過去に2回以上ではなく、短期間に2回以上刺された人です。

このように「蜂に2度刺されると危ない」というのは、ほとんどの場合「短期間に複数回刺された人のうちのごくわずかな人」ですが、「危ない」というのは事実なので気をつけなければなりません。

アナフィラキシー症状やアナフィラキシーショックにならないとしても、過去に蜂に刺されて、ハチ毒アレルギーを持っていると痛み、かゆみ、はれなどの症状が重くなります。

また、ハチ毒アレルギーを持っていると、アリやムカデなど蜂以外の虫に噛まれても反応することがあります。

いずれにしても、蜂に一度刺されたら、これまで以上に蜂に刺されないように注意をしておきましょう。

3-2 即時型アレルギー反応と遅延型アレルギー反応

蜂に刺された時に「即時型アレルギー反応」と「遅延型アレルギー反応」があるということを理解していると、不必要に心配することを避けられます。

即時型アレルギー反応

即時型アレルギー反応は、刺されてから数分後~30分後に表れる症状で、刺された部分に痛みや赤みが出ます。

蜂に刺されてから30分以内は、アナフィラキシーショックが起きる可能性がありますので、最も注意が必要な時間です。

もし、しびれ、呼吸困難、発熱、頭痛など全身症状が表れていたらすぐに救急車を呼んでください。

遅延型アレルギー反応

遅延型アレルギー反応は、刺されてから1日~2日(まれに10日以内)に大きく腫れ上がって、かゆみ、発熱、頭痛、倦怠感などが起こります。

蜂に刺されて、一時収まっているのに後になって急に症状が出てきたら不気味ですよね。

でも、遅延型アレルギー反応で、アナフィラキシーショックが起きることはありませんので安心してください。

遅延型は通常1週間以内に治まりますが、かゆみがおさまらない、など症状がひどいようなら皮膚科に行ってください。

アレルギー症状を抑える薬を処方してくれますので、すぐに症状が和らぐでしょう。

3-3 蜂に刺されたときの危険度

蜂に刺されたときに、どれほど危ないレベルであるかを症状別に紹介します。

それぞれステージ1~3として、「自己処理できるレベル」「病院に行くレベル」「救急車を呼ぶレベル」にわけて考えてみます。

ステージ1:自己処理できるレベル(軽度)

蜂に刺された場所一部分にかゆみ、いたみ、はれなどの症状が起きる場合は、軽度の症状です。

全身に症状が表れる場合でも「体が赤くなる」、「体は倒れるほどではないが何となくだるい、気持ちが悪い」という症状が起きるかもしれません。

このような反応は、多かれ少なかれ「蜂に刺された人ほとんどが感じる症状」ですので心配ありません。

軽度の反応は、遅延型アレルギー反応で表れることもあります。
いずれにしても、症状は当日か、長くても1週間以内におさまることが多いです。

ステージ2:病院に行くレベル

「全身症状が強く表れ」、「生活に支障が出るレベル」となるとステージ2ですので、病院に行ってください。

ステージ1の症状に加えて、しびれ、吐き気、腹痛、頭痛、めまいなどの症状があらわれます。

ステージ3:救急車を呼ぶレベル(直ちに緊急処置を)

「意識障害」「感覚障害」「嘔吐」などの症状が表れたら、直ちに緊急処置が必要なレベルです。

蜂に刺された後、息をするのも苦しくなり、その場でうずくまって動けなくなってしまうことがあります。

また目が見えなくなったり、耳が聞こえなくなったり、意識を失ったりすることもあります。

もし処置が遅れると、失明、意識不明、そして最悪の場合は命を失ってしまいます。

安全な場所(刺された場所から20メートル以上の場所)に移動したら、直ちに救急車を呼んでください。

救急車が到着するまで、足側を15cm~30cm高くする「ショック体位」にして、顔は嘔吐したときのために横に向けてください。

4 蜂に刺されたときの対処法

「蜂に刺された時の正しい対処法」、として6つのステップを紹介します。

あなたの正しい行動が、あなたや家族を救うことになるかもしれません。
ここに書かれていることを覚えて、正しい順番で対処してください。

ステップ1:その場を去る

蜂に刺されたら、すぐにその場を20メートル以上離れてください。

蜂の種類には、他の蜂を呼び寄せる警報フェロモンをまき散らしたり、刺した毒針の中に警報フェロモンが入っていたりする場合があるからです。

蜂に刺された時に最も注意が必要なのはアナフィラキシーショックで、これは短期間のうちに2度以上刺されると起こりやすくなります。

大声を出したり、急に走って逃げたりすると蜂を刺激させてしまうことがあるので、『静かにゆっくりと』安全な場所に移動してください。

ステップ2:毒針を抜く

蜂に刺された針が残っていたら、それを取り除きましょう。

蜂の針は、残っていると毒を出し続けますのでできるだけ早く取り除くことが必要です。

※蜂に刺されて針が残っているのはミツバチだけです。

この時、手で毒針をつまんで出そうとしたり、口で噛んで出そうとしたりすると毒針が体内に入り込んでしまうことがありますのでやめましょう。

ピンセントで毒針を抜くか、免許証など硬いカードで横から払うようにして針を取り除いでください。

ステップ3:毒を洗い流す

毒針がなくなったら、傷口をよく洗って毒を洗い流してください。

※ミツバチ以外は最初から毒針が残っていませんのでステップ2を飛ばしてください。

蜂の毒には痛みを感じさせる成分が入っていますので、毒針を洗い流すと痛みがかなり和らぐことがあります。

ステップ4:虫刺され用の薬を塗る

蜂に刺された場所に、「抗ヒスタミン成分」か、「ステロイド成分」含まれている虫刺され用の薬を塗ってください。

抗ヒスタミン成分には、かゆみやはれを抑える効果があり、ステロイド成分には、炎症やアレルギー症状を抑える効果があります。

虫刺され用の薬を買うときは、抗ヒスタミン成分かステロイド成分、もしくはその両方が虫刺され用の薬に含まれているか確認して下さい。

ステップ5:患部を冷やす

蜂に刺された場所にかゆみや痛みが続くようなら、患部を冷やすと症状を抑えることができます。

かゆくなってかいてしまうと、症状が悪化してしまいますのでかゆくなったら、水を流したり、氷をつけたりして症状を抑えるようにしてください。

ステップ6:病院に行く

応急処置が終わったら、皮膚科に行ってください。

蜂に刺されてもほとんどの場合症状はなくなりますが、まれに後遺症が残ったり、命を失ったりするほど重症になることがあります。

治療は遅れれば遅れるほど、危険度は高まります。

蜂に刺されて少しでも不安があるなら、ただちに病院に行くことをおすすめします。

5 自分でできる処置と病院で受けられる処置の違い

自分で処置をすることのメリットは、「手軽さ」、そして病院に行くことのメリットは「安全」です。

忙しいあなたは、出来れば時間が奪われる病院には行きたくない、と思われるかもしれません。
しかし、病院には行くだけのメリットがあります。

5-1 知識と経験

自分で出来る処置と病院で受けられる処置の最大の違いは『知識』です。

あなたがどんなに蜂に刺されたり、刺されたのを見た経験があったりしたとしてもそれは数回でしょう。

一方医者は何十回何百回と症状を実際にみているという経験と、専門的な知識を教わっています。
病院に行けば、あなたが『その時に最も必要な処置』を施してくれます。

5-2 処方箋と市販薬の違い

病院に行けば処方箋を施してくれますが、個人で治療をすると市販薬で治療するしかありません。

処方箋には、市販薬にないメリットがあります。

症状に合わせて処方してくれる

処方箋は、お医者さんとの診断の後、症状に合わせて処方してくれるので、いわば「深く狭く」効果があります。

一方市販薬は、「虫刺され用」など総合的に効くもので、いわば「浅く広く」です。

蜂の種類によって、(例えばアシナガバチに刺された場合とスズメバチに刺された場合などで)治療が大きく変わることはありませんが、「過去に蜂に刺されたことがある人」、「アレルギー体質の人」は重症になる可能性があるので、治療や処方箋が変わってきます。

そのため、病院にかかる場合は、もし蜂の種類がはっきりわからなくても、「過去に刺されたことがあるか」、「アレルギー体質か」など、診断に必要な情報を答えられるようにしておきましょう。

薬の強さ

病院に行くと、お医者さんの注意や指導のもとに強い薬を処方してくれます。

しかし、診察なしで買うことができる市販薬には、強い効果があるものを置くことができません。

私自身も、蜂に刺されて全身症状に苦しんだことがありましたが、一般の市販薬では症状が抑えることができませんでした。

病院に行ったらかなり強いステロイド剤を処方してくれ、それを飲んだら蜂に刺された症状はもちろん、鼻炎もピタッと止みました。
(どうやら私の鼻炎はアレルギー性だったようです。)

保険が効く

病院に行くメリットは保険が効くという金銭的なメリットもあります。

市販薬は、100%自己負担になってしまいますが、病院に行けば診察代や処方箋に健康保険が適用されて、3割負担ですむので場合によっては『病院に行った方が安くすんだ』ということもあります。

また、仕事中に蜂に刺されたのであれば、労災認定されますので、費用が全額戻ってきます。

自分で出来る処置よりも優れた方法で、しかも安くできるとしたら無理して病院に行かないで我慢しているのが馬鹿らしく感じてしまいますよね。

蜂に刺されたら無理しないで病院に行くことをおすすめします。

6 自分で処置するか、それとも病院に行くか

自分で処置するか、病院に行くかの判断は初期症状にかかってきます。

短期間に2回以上刺されていたり、刺されてから30分以内に下記のような強い全身症状が表れていたりしたら、すぐに病院に行くべきです。

  • 呼吸困難
  • しびれ
  • 嘔吐
  • 意識障害
  • 感覚障害
  • かゆみや痛みが非常に強くておさまらない

一方、「かゆみ」「痛み」「腫れ」「だるい」などの症状が軽いなら、「蜂に刺されたときの対処法」で説明しているように『適切な処置』を施すだけで、大抵症状はなくなります。

刺されてから1日~2日(まれに3日~10日)後に痛み、かゆみ、はれなどの症状が起こるのは、遅延型アレルギー反応でアナフィラキシーショックが起きることはありません。

しかし、蜂に刺されて軽傷か重症かを素人が瞬時に判断するのは難しく、もし重症なら治療が遅れるとそれだけ問題が大きくなるということを認めておく必要があるでしょう。

病院に行って処方箋を施してもらったら、今まで苦しんでいた症状がすぐにおさまるというケースも少なくありません。

なので、繰り返しになりますができれば病院に行くことをおすすめします。

まとめ

蜂に刺されたときの対処法について考えてきましたが、いかがだったでしょうか。

「腰が細くくびれている蜂」は刺されると危険ですが、「腰がくびれていない蜂」は毒性がなく刺されても問題はありません。

蜂に刺されたときは、「大声を出すのではなく」静かにその場から20メートル以上離れ、それから毒針を抜きましょう。

傷口は口で毒を吸い出したり、アンモニア(尿)をかけたりするのではなく水で洗い流し、傷口を冷やしましょう。

蜂に刺されたときに特に注意したいのは、短期間に複数さされると起こる可能性があるアナフィラキシーショックです。

短期間に複数回刺されていて、嘔吐、意識障害、感覚障害など重い症状になっていたらすぐに病院に行きましょう。

病院に行くと、専門的な知識による診断と、個人ではもらえない処方箋をもらえます。

病院に行くか、自分で対処できるかの判断は蜂に刺されたときの初期症状の程度によります。

刺された翌日以降に起こる遅延型アレルギー反応は、それほど心配する必要はありません。

私の友人のように、蜂に刺された後、ありや他の虫に刺されて腫れ上がってしまうとしたらそれは「変な病気になってしまった」のではなく、「ハチ毒アレルギーによるアレルギー反応」です。

今まで何ともなかった人が、花粉症になってしまうと急にくしゃみや鼻水などのアレルギー反応が出るようになるようなものですね。

嬉しいことではありませんが、最悪の事態ではありません。
実際、蜂に刺されて、最悪な事態になるのは『ごくわずか』です。

蜂に刺されることを軽く見るのは避けたいですが、あまり心配しすぎないようにしてくださいね。
適切な処置が施されればほとんどの場合、大きな問題にならなくてもすむでしょう。